令和6年度5/14のゼミ(複素関数論)

1.概要&注意事項

今回やった内容はベクトル解析についてです。複素解析とはほぼ関係ありません。それに、この kansuron.pdf (hit-u.ac.jp) PDFの内容をほぼ丸写しして少し補足したものなのでPDFを見た方がわかりやすいかもしれません。あと、ベクトル解析をがっつりやるわけではなく、複素解析にかかわる部分と基本的な部分を触るだけなのでご理解いただいたうえで本記事を読んでください。

2.ベクトル場

今回いきなりベクトル解析に触れたので、まずは重要な概念について触れていきましょう。それはベクトル場です。定義としては次のようになります。

定義?(ベクトル場)


まず、ある広がりを持った空間をイメージしてください。(日常用語の意味で連想する空間のイメージで結構です。)その空間内のどこでも一点で、それぞれ一つベクトルが定義されるとします。つまり、空間内の一点rを指定すると、rの関数としてベクトルが一つ決まるということです。

A=A(r)

このような関数を ベクトル場 と呼びます。


引用:ベクトル場 [物理のかぎしっぽ]/https://hooktail.sub.jp/vectoranalysis/VectorFiled/

ベクトル場を簡単に紹介しましたが、とにかく後で出てくるので覚えてください。イメージ的には風速の図が当てはまります。

3.勾配ベクトル

f=f(\vec{p})=f(x,\,y)で与えられる\mathbb{R}^2上のC^1関数を考えます。ここで、f\in\mathbb{R}^2は一次元ベクトルだと考えれば、これもある種のベクトル場だと考えられるでしょう。そして、このようなベクトル場を、スカラー場といいます。これは気温や海抜高度の図が当てはまります。勾配ベクトルを取ると、スカラー場からベクトル場を生成することができます。その方法を紹介しましょう。

まず、C^1を仮定したからfは任意の\vec{p}=\begin{pmatrix} x\\y\end{pmatrix}で全微分可能であり、

f(x+\Delta x,\,y+\Delta y)=f(x,y)+a\,\Delta x+b\Delta y+o(\sqrt{\Delta x^2+\Delta y^2})

(ただし、a=f_x(x,y),b=f_y(x,y)でこれらは定数とする。)こう書けます。ここで、\vec{V}=\begin{pmatrix} a\\b\end{pmatrix}とおけば、先ほどの式を書き換えると次のようになります。

f(\vec{p}+\Delta \vec{p})=f(\vec{p})+\vec{V}\cdot\Delta\vec{p}+o(||\Delta\vec{p}||)

この時、fの値が最大になるのは\vec{V}\delta\vec{p}が同じ方向を向いているときでまた、最小の値になるのは違う方向を向いているときになります。なぜ最大最小を考えるかというと、勾配ベクトルという言葉の意味を考えるとわかります。勾配というのは高さの変化、山で例えれば、航空写真から山を見たときの斜面の向きのことです。つまりどういうことかというとスカラー場上でのとある一点でのスカラー量と周りのいくつかの点のスカラー量を比較して、その二つの値の差が最大になるような周りの点を選んであげれば斜面の向き、勾配がわかるということです。そして、勾配ベクトルはgrad\:f(p)と表し、ここではVのことになります。即ち、

grad\:f(\vec{p}):=(f_x(x,y),\,f_y(x,y))

となります。

定義2(勾配ベクトル)


f\mathbb{R}^2上のC^1関数とし、\vec{p}=\begin{pmatrix} x\\y\end{pmatrix}とすると

grad\:f(\vec{p}):=(f_x(x,y),\,f_y(x,y))

3.回転

いきなりですが、まずは回転ベクトルの定義から与えましょう。

定義3 (ベクトル場の回転)


V=V(\vec{p})=V\begin{pmatrix} u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}に対し、回転を次のように定める。

rot\:V(\vec{p}):=-u_y(x,y)+v_x(x,y)\in\mathbb{R}

回転とは直感的には次のように説明されます。

Vが風速を表すとします。そうすると、点pに風車を置くとき、回転に寄与する分の合計が回転になります。

4.グリーンの定理

先ほどの回転を利用して、グリーンの定理を改造しましょう。

定理4 Re:グリーンの定理

Cを単純閉曲線、\Omegaをその内部とする。そのとき、ベクトル場\vec{V}に対して、

\displaystyle\int_C\vec{V}\cdot d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega rot\vec{V}\:dx\,dy

が成り立つ。\vec{V}の成分として(P(x,y),\,Q(x,y))を代入すればグリーンの定理になる。

それでは証明していきます。

証明


まず、rot\:V(\vec{p})=-u_y(x,\,y)+v_x(x,\,y)より、\displaystyle\int_C\vec{V}\cdot d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega rot\vec{V}\:dx\,dyの右辺は次のようになる。\displaystyle\int\int_\Omega -u_y(x,y)+v_x(x,y)\,dx\,dy

また、左辺については\displaystyle\int_CV\cdot\,d\vec{p}=\int_Cu(x,y)+v(x,y)だったので左辺と右辺を等号で結ぶと\displaystyle\int_CV\cdot\,d\vec{p}=\int\int_\Omega\,rot\,V\:dx\,dyと、なる。ここでu(x,y)=P,\:v(x,y)=Qとすればグリーンの定理の形になるので等式が成り立つことを証明できた。

発散

発散も回転と同じく定義から入りましょう。

定義5 (ベクトル場の発散)


発散は回転と同じベクトル場Vに対し、次のように定義できる。

div\:V(\vec{p})\::=u_x(x,y)+v_x(x,y)\in\mathbb{R}

こんな感じで定義できるのですが、直感的な説明としては、ある正方形を用意したときの風の流出量-流入量ということになります。

ガウスの発散定理

C=\{p(t)=(x(t),y(t))\|t\in[a,b]\}を滑らかな単純閉曲線と言い、\Omegaをその内部とします。与えられたC^1級ベクトル場V=V\begin{pmatrix} u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}に対し、V^*\begin{pmatrix} -u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}とするとき、div\:V=rot\:V^*が成り立ちます。よってグリーンの定理より、

\displaystyle\int_CV^*\cdot\,d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega\,div\:V\,dx\,dy

一般に、ガウスの発散定理は次のように表せられます。

p(t)におけるCの外向き法線ベクトルp^*(t)=(y'(t)-x'(t))を考えると、

\displaystyle\int_CV^*\cdot\,d\vec{p}\:=\:\int_a^b\,V^*(p(t))/,p'(t)\,dt\:=\:\int_a^bV(p(t))\,\cdot\,p^*(t)dt

が成立します。これは左辺がベクトル場の曲線Cにそった流出量であることを意味しており、右辺の積分(流出入量の合計)の意味と合致すします。

まとめ

今回はベクトル解析についてやりました。これからもこのような感じでゼミでやった内容を書いていくのでよかったらまたみてください。

参考文献

複素関数論の基礎のキソ-Hitotsubashi University」一橋大学経済研究所 p79~105 https://www1.econ.hit-u.ac.jp/kawahira/courses/kansuron.pdf

1.概要&注意事項

今回やった内容はベクトル解析についてです。複素解析とはほぼ関係ありません。それに、この kansuron.pdf (hit-u.ac.jp) PDFの内容をほぼ丸写しして少し補足したものなのでPDFを見た方がわかりやすいかもしれません。あと、ベクトル解析をがっつりやるわけではなく、複素解析にかかわる部分と基本的な部分を触るだけなのでご理解いただいたうえで本記事を読んでください。

2.ベクトル場

今回いきなりベクトル解析に触れたので、まずは重要な概念について触れていきましょう。それはベクトル場です。定義としては次のようになります。

定義?(ベクトル場)


まず、ある広がりを持った空間をイメージしてください。(日常用語の意味で連想する空間のイメージで結構です。)その空間内のどこでも一点で、それぞれ一つベクトルが定義されるとします。つまり、空間内の一点rを指定すると、rの関数としてベクトルが一つ決まるということです。

A=A(r)

このような関数を ベクトル場 と呼びます。


引用:ベクトル場 [物理のかぎしっぽ]/https://hooktail.sub.jp/vectoranalysis/VectorFiled/

ベクトル場を簡単に紹介しましたが、とにかく後で出てくるので覚えてください。イメージ的には風速の図が当てはまります。

3.勾配ベクトル

f=f(\vec{p})=f(x,\,y)で与えられる\mathbb{R}^2上のC^1関数を考えます。ここで、f\in\mathbb{R}^2は一次元ベクトルだと考えれば、これもある種のベクトル場だと考えられるでしょう。そして、このようなベクトル場を、スカラー場といいます。これは気温や海抜高度の図が当てはまります。勾配ベクトルを取ると、スカラー場からベクトル場を生成することができます。その方法を紹介しましょう。

まず、C^1を仮定したからfは任意の\vec{p}=\begin{pmatrix} x\\y\end{pmatrix}で全微分可能であり、

f(x+\Delta x,\,y+\Delta y)=f(x,y)+a\,\Delta x+b\Delta y+o(\sqrt{\Delta x^2+\Delta y^2})

(ただし、a=f_x(x,y),b=f_y(x,y)でこれらは定数とする。)こう書けます。ここで、\vec{V}=\begin{pmatrix} a\\b\end{pmatrix}とおけば、先ほどの式を書き換えると次のようになります。

f(\vec{p}+\Delta \vec{p})=f(\vec{p})+\vec{V}\cdot\Delta\vec{p}+o(||\Delta\vec{p}||)

この時、fの値が最大になるのは\vec{V}\delta\vec{p}が同じ方向を向いているときでまた、最小の値になるのは違う方向を向いているときになります。なぜ最大最小を考えるかというと、勾配ベクトルという言葉の意味を考えるとわかります。勾配というのは高さの変化、山で例えれば、航空写真から山を見たときの斜面の向きのことです。つまりどういうことかというとスカラー場上でのとある一点でのスカラー量と周りのいくつかの点のスカラー量を比較して、その二つの値の差が最大になるような周りの点を選んであげれば斜面の向き、勾配がわかるということです。そして、勾配ベクトルはgrad\:f(p)と表し、ここではVのことになります。即ち、

grad\:f(\vec{p}):=(f_x(x,y),\,f_y(x,y))

となります。

定義2(勾配ベクトル)


f\mathbb{R}^2上のC^1関数とし、\vec{p}=\begin{pmatrix} x\\y\end{pmatrix}とすると

grad\:f(\vec{p}):=(f_x(x,y),\,f_y(x,y))

3.回転

いきなりですが、まずは回転ベクトルの定義から与えましょう。

定義3 (ベクトル場の回転)


V=V(\vec{p})=V\begin{pmatrix} u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}に対し、回転を次のように定める。

rot\:V(\vec{p}):=-u_y(x,y)+v_x(x,y)\in\mathbb{R}

回転とは直感的には次のように説明されます。

Vが風速を表すとします。そうすると、点pに風車を置くとき、回転に寄与する分の合計が回転になります。

4.グリーンの定理

先ほどの回転を利用して、グリーンの定理を改造しましょう。

定理4 Re:グリーンの定理

Cを単純閉曲線、\Omegaをその内部とする。そのとき、ベクトル場\vec{V}に対して、

\displaystyle\int_C\vec{V}\cdot d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega rot\vec{V}\:dx\,dy

が成り立つ。\vec{V}の成分として(P(x,y),\,Q(x,y))を代入すればグリーンの定理になる。

それでは証明していきます。

証明


まず、rot\:V(\vec{p})=-u_y(x,\,y)+v_x(x,\,y)より、\displaystyle\int_C\vec{V}\cdot d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega rot\vec{V}\:dx\,dyの右辺は次のようになる。\displaystyle\int\int_\Omega -u_y(x,y)+v_x(x,y)\,dx\,dy

また、左辺については\displaystyle\int_CV\cdot\,d\vec{p}=\int_Cu(x,y)+v(x,y)だったので左辺と右辺を等号で結ぶと\displaystyle\int_CV\cdot\,d\vec{p}=\int\int_\Omega\,rot\,V\:dx\,dyと、なる。ここでu(x,y)=P,\:v(x,y)=Qとすればグリーンの定理の形になるので等式が成り立つことを証明できた。

発散

発散も回転と同じく定義から入りましょう。

定義5 (ベクトル場の発散)


発散は回転と同じベクトル場Vに対し、次のように定義できる。

div\:V(\vec{p})\::=u_x(x,y)+v_x(x,y)\in\mathbb{R}

こんな感じで定義できるのですが、直感的な説明としては、ある正方形を用意したときの風の流出量-流入量ということになります。

ガウスの発散定理

C=\{p(t)=(x(t),y(t))\|t\in[a,b]\}を滑らかな単純閉曲線と言い、\Omegaをその内部とします。与えられたC^1級ベクトル場V=V\begin{pmatrix} u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}に対し、V^*\begin{pmatrix} -u(x,y)\\v(x,y)\end{pmatrix}とするとき、div\:V=rot\:V^*が成り立ちます。よってグリーンの定理より、

\displaystyle\int_CV^*\cdot\,d\vec{p}\:=\:\int\int_\Omega\,div\:V\,dx\,dy

一般に、ガウスの発散定理は次のように表せられます。

p(t)におけるCの外向き法線ベクトルp^*(t)=(y'(t)-x'(t))を考えると、

\displaystyle\int_CV^*\cdot\,d\vec{p}\:=\:\int_a^b\,V^*(p(t))/,p'(t)\,dt\:=\:\int_a^bV(p(t))\,\cdot\,p^*(t)dt

が成立します。これは左辺がベクトル場の曲線Cにそった流出量であることを意味しており、右辺の積分(流出入量の合計)の意味と合致すします。

まとめ

今回はベクトル解析についてやりました。これからもこのような感じでゼミでやった内容を書いていくのでよかったらまたみてください。

参考文献

複素関数論の基礎のキソ-Hitotsubashi University」一橋大学経済研究所 p79~105 https://www1.econ.hit-u.ac.jp/kawahira/courses/kansuron.pdf

令和6年度4/1のゼミ(複素関数論)

1.概要&注意事項

今回やった内容としては項別積分&項別微分ローラン展開についてです。ただ、この kansuron.pdf (hit-u.ac.jp) PDFの内容をほぼ丸写しして少し補足したものなのでPDFを見た方がわかりやすいかもしれません。

2.項別積分&項別微分

まずは次の補題を見てください

補題1 (微積分と無限和の順序交換)


(1)CD内の任意の曲線とする。連続な関数列の有限和\displaystyle g_n(z)=f_0(z)+f_1(z)+\cdots+f_n(z)C上で、ある関数\displaystyle g(z)=\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z)に一様収束するとき、

\displaystyle\int_C\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z)dz=\sum\limits^\infty_{n=0}\int_Cf_n(z)dz

(2)正則な関数列の有限和\displaystyle g_n(z)=f_0(z)+f_1(z)+\cdots+f_n(z)D上で、ある関数\displaystyle g(z)=\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z)に広義一様収束するとき、

\displaystyle(\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z))'=\sum\limits^\infty_{n=0}f_n'(z)

この補題から、項別積分と項別微分の正当化ができます。

それでは証明をしていきます。

補題1 (微積分と無限和の順序交換)の証明(1)


g=\lim\limits_{n\to\infty}g_nとすると

左辺=\displaystyle\int_Cg(z)dz^*=\lim\limits_{n\to\infty}\int_Cg_n(z)dz\\\displaystyle=\lim\limits_{n\to\infty}\int_C\sum\limits^n_{k=0}f_k(z)dz=\lim\limits_{n\to\infty}\sum\limits^n_{k=0}\int_Cf_k(z)dz=右辺

^*=のところで次の命題を用いています。

命題2


連続な関数列g_n:D\to\mathbb{C}(n\ge0)が関数g:D\to\mathbb{C}D上一様収束するとき、D内の任意の曲線Cに対し、

\displaystyle\int_Cg_n(z)dz\to\int_Cg(z)dz(n\to\infty)

この命題の証明はここでは省くのですが、最初に紹介したPDF https://www1.econ.hit-u.ac.jp/kawahira/courses/kansuron.pdf の第14講にあるので見てみてください。

補題1 (微積分と無限和の順序交換)の証明(2)

(1)と同様にできます。ただこの(2)では命題1の代わりにワイエルシュトラスの定理を用いれば証明できます。

\displaystyle g'(z)=\lim\limits_{n\to\infty}g_n'(z)\\\displaystyle=\lim\limits_{n\to\infty}(\sum\limits^n_{k=0}f_k(z))'=\lim\limits_{n\to\infty}\sum\limits^n_{k=0}f_k'(z)

次はローラン展開を見ていきます。

3.べき級数

まずは次の補題を見てみましょう。あとで結構使います。

補題3 (絶対収束の条件,アーベルの補題)


べき級数F(z)=A_0+A_1z+\cdots+A_nz_0^n+\cdots があるz_0\in\mathbb{C}で収束するとき、|z|<|z_0|を満たす任意のzについてF(z)は収束する.とくに0<r<|z_0|を任意に固定するとき,部分和の列F(z_0)=A_0+A_1z+\cdots+A_nz_0^nE(r):=\{z\in\mathbb{C}\vert|z|\le r\}上で一様収束する.すなわち、D(0,r)上で広義一様 収束する.

それでは証明していきましょう。

補題3 (絶対収束の条件,アーベルの補題)の証明


r<|z_0|を満たす任意のrを固定しよう。いま、F(z_0)=A_0+A_1z+\cdots+A_nz_0^n+は収束するから、A_nz_0^\inftyが発散しないようにするためにはA_nz_0^n\to0(n\to\infty)でなくてはならない。(z^\inftyは[z<1]なら0、[z>1]なら\inftyになるため。)よって、あるM>0が存在し、すべてのn\le0|A_nz_0^n|\le Mが成り立つ。

さて|z|\le r<|z_0|を満たすzを取る時、|A_nz_0^n|=|A_nz_0^n|\cdot\left\vert\dfrac{z}{z_0}\right\vert^n\le M\cdot\left(\dfrac{r}{|z_0|}\right)^nであるから、

\displaystyle\lim\limits_{n\to\infty}(|A_0|+|A_1z_0|+\cdots+|A_0z_0^n|)\\\displaystyle\le\lim\limits_{n\to\infty}M\left\{1+\dfrac{r}{|z_0|}+\cdots+\left(\dfrac{r}{|z_0|}\right)^n\right\}\le M\dfrac{1}{1-r/|z_0|}

よってF(z)は絶対収束する。したがって、|z|\le rを満たすzについて[F(z)]は収束する。[r(<|z_0|)]は任意であったから、|z|<|z_0|のときF(z)は収束することが示された。

次にE(r)上での一様収束性を確認する。z\in E(r)に対し、

|F(z)-F_n(z)|=|A_{n+1}z^{n+1}+A_{n+2}z^{n;2}+\cdots|\\\displaystyle=\lim\limits_{N\to\infty}|A_{n+1}z^{n+1}+\cdots+A_{n+N}z^{n+N}|\\\displaystyle\le\lim\limits_{N\to\infty}M\left\{\left(\dfrac{r}{|z_0|}\right)^{n+1}+\cdots+\left(\dfrac{r}{|z_0|}\right)^{n+N}\right\}\\\displaystyle\le M\dfrac{(r/|z_0|)^{n+1}}{1-r/|z_0|}

最後の式はzに依存せず、かつn\to\inftyのとき任意に小さくできるから、E(r)上でFは一様収束する。

この補題から、べき級数はどこか(中心以外の)1点で収束すれば、それを境界に持つ円盤上に広義一様収束してくれることがわかります。広義一様収束性があれば、ワイエルシュトラスの定理が適用できることになり、すなわち次の定理が成り立ちます。

定理4 (べき級数の性質)


べき級数F(z)=A_0+A_1z+\cdots+A_nz^n+\cdotsがある原点中心の円盤D=D(0,r)で広義一様収束するものとする。このとき、以下が成り立つ。


(1)D上でF(z)は正則

(2)べき級数A_1+2A_2z+\cdots+nA_n^{n-1}D上で広義一様収束し、F'(z)と一致する。

この定理はべき級数の正則性からワイエルシュトラスの定理を用いることで言える性質で、\dfrac{1}{f(z)}の形をした関数の留数を求める公式の証明でも用いられます。

そうしたらテイラー展開をの主張を強めた次の定理を見ていきましょう。

定理5 (強・テイラー展開)


D\subset\mathbb{C}は正則関数とする。さらに\alpha\in DR>0C=C(\alpha,R)\subset Dを満たすとする。このとき、Cの内部の任意の点zにたいして次の等式が成り立つ。

f(z)=f(\alpha)+f'(\alpha)(z-\alpha)+\dfrac{f''(\alpha)}{2!}(z-\alpha)^2+\cdots

とくに、右辺のべき級数D上広義一様収束し、左辺の関数に一致する。

それでは証明していきます。

z_0Cの内部から任意にとり、r:=|z_0-\alpha|<Rとおく。

さらにz\in Cを一つ取り、固定する。この時、\left\vert\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}\right\vert=\dfrac{r}{R}<1であるから、

\displaystyle\dfrac{f(z)}{z-z_0}=\dfrac{f(z)}{(z-\alpha)-(z_0-\alpha)}=\dfrac{f(z)}{z-\alpha}\cdot\dfrac{1}{1-\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}}\\\displaystyle=\dfrac{f(z)}{z-\alpha}\cdot\sum\limits^\infty_{n=0}\left(\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}\right)^n

いま、f_n(z):=\dfrac{f(z)}{z-\alpha}\cdot\left(\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}\right)^n,g_n(z):=f_0(z)+\cdots+f_n(z),g(z):=\dfrac{f(z)}{z-z_0}とおくと、上の式変形からz\in Cを固定するごとに(数列の極限の意味で)\displaystyle g(z)=\lim\limits g_n(z)=\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z)である。これがC上の関数の意味で一様収束になっていることを 示そう。C上での|f(z)|の最大値をM=M(C)とし、z\in Cのとき\beta=\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}とおく。このとき、

|g_n(z)-g(z)|=|f_{n+1}(z)+f_{n+2}(z)+\cdots|=\left\lvert\dfrac{f(z)}{z-\alpha}\left(\beta^{n+1}+\beta^{n+2}+\cdots\right)\right\rvert\\\le\dfrac{M}{R}\cdot\left\lvert\dfrac{\beta^{n+1}}{1-\beta}\right\rvert\le\dfrac{M|\beta|^{n+1}}{R(1-|\beta|)}

|\beta|=r/R<1z\in Cの取り方に依存しないから、g_ngC上一様収束する。

よって積分公式より、

\displaystyle f(z_0)=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\dfrac{f(z)}{z-z_0}dz=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\sum\limits^\infty_{n=0}f_n(z)dz\\\displaystyle=\dfrac{1}{2\pi i}\sum\limits^\infty_{n=0}\int_C f_n(z)dz\\\displaystyle=\dfrac{1}{2\pi i}\sum\limits^\infty_{n=0}\int_C\dfrac{f(z)}{z-\alpha}\cdot\left(\dfrac{z_0-\alpha}{z-\alpha}^n\right)dz\\\displaystyle=\sum\limits^\infty_{n=0}\left(\dfrac{1}{2\pi i}\int_C \dfrac{f(z)}{(z-\alpha)^{n+1}}dz\right)(z_0-z)^n\\\displaystyle=\sum\limits^\infty_{n=0}\dfrac{f^{(n)}(\alpha)}{n!}(z_0-\alpha)^n

以上でCの内部での収束性が示された。

次に広義一様収束性を示そう。任意の0<r<Rについて、コンパクト集合E_r:=\{z\in\mathbb{C}\bigm\vert|z-\alpha|\le r\}上で一様収束することをしめせば十分である。

今、適当なr<r'<Rについて|z_0-\alpha|=r'を満たすz_0を取れば、上の議論により\displaystyle f(z_0)=\sum\limits^\infty_{n=0}A_n(z_0-\alpha)^n(ただしA_n=f^{(n)}(\alpha)/n!)は収束する。よって、補題3から、f(z)=\sum\limits^\infty_{n=0}A_n(z-\alpha)^nE(r)上一様収束する。

同様のアイデアで、ローラン展開もつぎのように広義一葉収束性込みで示されます。

定理6 (ローラン展開&広義一様収束性)

\alpha\in\mathbb{C}とし、円環領域D=\{z\in\mathbb{C}\bigm\vert R_1<|z-\alpha|<R_2\}上で関数f:D\to\mathbb{C}は正則であるとする。さらに、n\in\mathbb{Z}およびC=C(\alpha,R),(R_1<R<R_2)にたいし

\displaystyle A_n=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C \dfrac{f(z)}{(z-\alpha)^{n+1}}dz

と定める。この時、任意のz\in Dに対して、次の等式が成り立つ。

f(z)=\cdots+\dfrac{A_{-2}}{(z-\alpha)^2}+\dfrac{A_{-1}}{z-\alpha}+A_0+A_1(z-\alpha)+A_2(z-\alpha)^2+\cdots

特に下線部および二重下線部の級数D上で広義一様収束し、左辺と一致する。

この定理の証明としては省くのですが、広義一様収束性についてはローラン展開を下線部と二重下線部にわけて、それぞれが任意の|z|\le r_2<R_2|z|\ge r_1>R_1で一様収束することを示せばよいことになります。前者は補題3がそのまま適用できるので先ほどの定理と同様になります。そして、後者はF(z)=A_0+A_1/z+\cdots+A_n/z^n+\dots級数について補題3を修正してあげれば上手くいくと思います。具体的には、補題3と同じ議論で\left\lvert\dfrac{A_n}{z^n}\right\rvert=\left\lvert\dfrac{A_n}{z_0^n}\right\rvert\cdot\left\lvert\dfrac{z_0}{z}\right\rvert^n\le M\cdot\left(\dfrac{|z_0|}{r}\right)^nとなって、あとは補題3と同様に証明できます。

それでは、最後にローラン展開の一意性をみて終わりにしましょう。

定理6 (ローラン展開の一意性)

D\alphaを中心とする穴あき円盤とし、関数fは(少なくとも)D上で正則であるとする。もし数列[\{B_n\}_{n\in\mathbb{Z}}]で、D上の各点zにおいて、

\displaystyle f(z)=\sum\limits^\infty_{n=-\infty}B_n(z-\alpha)^n

が成り立つようなものが存在すれば、右辺の級数ローラン展開になっている。すなわち、すべての整数nに対して

B_n=A_n=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\dfrac{f(z)}{(z-\alpha)^{n+1}}dz

が成り立つ。

こんな感じでローラン展開の一意性が成り立ちます。そしてこれが成り立つとすれば線積分をせずとも初等的な式変形で求めることができます。それでは証明をしましょう。

定理6 (ローラン展開の一意性)の証明


D\alpha中心とする穴あき円盤とし、そこでのローラン展開

\displaystyle f(z)=\sum\limits^\infty_{n=-\infty}A_n(z-\alpha)^n

とする。さらに、D上の各点zにおいて

\displaystyle f(z)=\sum\limits^\infty_{n=-\infty}B_n(z-\alpha)^n

が成り立つと仮定する。この時、補題3あるいは定理5と同様の議論から、べき級数\displaystyle\sum\limits^\infty_{n=-\infty}B_n(z-\alpha)^nD上広義一様収束することがわかるとくに、円C=C(\alpha,r)R_1<r<R_2となるように選ぶとき、C上では一様収束する。よって任意の整数Nに対し、

\displaystyle A_n:=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\dfrac{f(z)}{(z-\alpha)^N+1}dz\\\displaystyle=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\dfrac{1}{(z-\alpha)^N+1}\cdot\sum\limits^\infty_{n=-\infty}B_n(z-\alpha)^ndz\\\displaystyle=\dfrac{1}{2\pi i}\int_C\sum\limits^\infty_{n=-\infty}B_n(z-\alpha)^{n-N-1}dz\\\displaystyle=\dfrac{1}{2\pi i}\sum\limits^\infty_{n=-\infty}\int_CB_n(z-\alpha)^{n-N-1}dz\\=B_N

証明ができたので最後にまとめましょう。

まとめ

今回は項別積分ローラン展開の一意性についてやりました。はじめてブログ書いてみたのですがどうでしたでしょうか。このような感じでゼミでやった内容を書いていくのでよかったらまたみてください。

参考文献

複素関数論の基礎のキソ-Hitotsubashi University」一橋大学経済研究所 p79~105 https://www1.econ.hit-u.ac.jp/kawahira/courses/kansuron.pdf